マギー・チャン(張曼玉、Maggie Cheung Ho Yee / M.C. Man-Yuk)

出演作品

いますぐ抱きしめたい欲望の翼楽園の瑕花様年華2046

はじめに

無垢な少女から艶やかな女性まで、いろんな輝度を出せる元アイドル女優。出演映画は80本以上にのぼり、受賞した賞も数え切れない。女優ではウォン・カーウァイ作品最多出演を誇る常連。

ウォン・カーウァイ作品

マギー・チャンがアイドルから脱皮し、女優として仕事をしてきた過程は、ウォン・カーウァイの出演作品を辿ることで確認できる。女優への第一歩といわれる『いますぐ抱きしめたい』では白のマスクをして登場したのがインパクトを持っていたが、可愛くあどけない彼女を見ることはできるものの演技力の乏しさは否定できない。

欲望の翼』でもキャストたちに支えられて初めて存在感を出すことができたが、この出演は女優への決意を感じさせたようだ。『欲望の翼』で共演したレスリー・チャンは、この作品では細かいシーンが重要になると考え、アレゴリー的に展開される「足音」を上手く引き出そうと撮影現場で歩く練習を繰り返したそうだ。マギー・チャンは彼の手法に感動し密かにその方法を盗んだと、彼への追悼で述べている(※1)。

94年の『楽園の瑕』では、既に女優としての演技を会得していることが窺い知れる。アイドルから女優への転換に悩んだ彼女は、撮影期間が尋常ならぬ長期に及んだこの作品を通じてウォン・カーウァイの情熱に触れ、出演作品へのこだわりをもつようになった(※2)。

脚注

経歴

1964年9月20日、中国・香港に生まれる。8歳から家族とともにイギリスで暮らす。17歳で香港に一人旅をしたときにスカウトされ、モデルとして雑誌やショーに出演するようになった。83年に香港の映画女優の登竜門とされる「ミス香港」コンテストで準優勝、ミス・ワールドの香港代表などに輝いたのをきっかけに、テレビドラマで活躍する。

テレビでは、ドラマの脇役やバラエティー番組などの出番が多かったが、後にバリー・ウォン監督の『青蛙王子』(84)で映画界へ進出。デビュー作品での演技が好評だったため、同年のテイラー・ウォン監督『君が好きだから』にさっそく起用され、レスリー・チャンと共演した。この頃のマギー・チャンは広東語をマスターし切れておらず、作品でもぎこちない会話をよくしていて、さらに少女っぽさを演出しているように感じる。

知名度が大きくアップするのは、ジャッキー・チェンとの共演。85年に同監督の『ポリス・ストーリー-香港国際警察』のマドンナ役に起用され、以後、ジャッキー・チェン映画の看板娘となった。他に80年代には、彼女が主演のラブ・コメディーが多い。80年代後半になると、アイドル路線から抜け出したいと考えていたマギー・チャンは、当時の香港ニューウェーブ第2世代の旗手だったウォン・カーウァイから幸運にもオファーを受け、同監督の『いますぐ抱きしめたい』(88)に出演。か弱く内気な女性を見事に演じ、その高い演技力が再評価された。これを気に本格派女優として再出発することになったが、この88年は、年間12本の映画に出演している。

翌89年以降になっても勢いは留まらず、年間数本の出演をこなしつつ、映画祭での受賞がどんどん増えていく。『仔猫のように抱きしめて』(89)では香港電影金像奨・主演女優賞、『フルムーン・イン・ニューヨーク』(90)では台湾金馬奨・主演女優賞をゲットした。90年代になると、香港映画という枠組みから離れ国際派の女優となっていく。きっかけは『欲望の翼』(90)、『客途秋恨』(90)などで、『阮玲玉』(ロアン・リンユィ-阮玲玉)(91)では、ベルリン国際映画祭・主演女優賞を受賞し(中国人女優初)、インターナショナルな方向を決定づけた。なお、彼女がゲットした賞は、5度の香港電影金像奨・女優賞をはじめ、数多い。

国際派路線を歩みながらも、他方では『ドラゴン・イン』など香港や中国の武侠映画にも多数出演したのが、この90年代。しかし、彼女が尊敬するウォン・カーウァイの『楽園の瑕』(94)を機に、監督の本気度に打たれたマギー・チャンは、今後は仕事を選んでいこうと考え、この撮影が終わると同時に約2年の休業を決断した。

復帰後は『宋家の三姉妹』、『ラヴソング』、オリヴィエ・アサイヤス監督の『イルマ・ヴェップ』(以上96)、『中国匣』(チャイニーズ・ボックス)(97)と、それまでのインターナショナル路線の地場を固めていった。98年にアサイヤス監督と結婚したが、後に離婚。世紀が変わると、既婚の熟女として旗袍(チャイナドレス)を11枚も着回した『花様年華』(00)や、刺客の飛雪として赤の絹をふんだんに舞わせた『英雄』(HERO)(02)で、彼女の発散する艶やかさが話題を呼んだ。

オリヴィエ・アサイヤス監督の『Clean』(04)では、カンヌ国際映画祭・最優秀女優賞を受賞。なお、96年に公開されたマギー・チャン主演の『ラヴソング』は、香港電影金像奨のグランプリ以下、史上初の9部門受賞を果たしている。

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