コール・ガール(1988年、香港)

原題:應召女郎1988|英題:Girl Without Tomorrow|監督:デヴィッド・ラム(林徳禄)

医療費の高騰・性的虐待・不法滞在ビザなど、80年代の香港が抱えていた社会問題を家庭の維持という観点から捉え直した社会派の映画。

キャスト

みどころ

マギー・チャンのアイドル時代の下着姿が見られる作品として有名なこの作品は、邦題のタイトルが示すとおり売春を扱っているが、原題の「女郎」は日本語と違い「若い女性」という意味に過ぎず、「應召=招きに応じる」という意味を伴ってはじめて売春婦(コールガール)の意味をもつ。

香港を舞台にするこの作品には4人の売春婦が登場する。原題のサブタイトルが示すとおり、「明日なき女性」にハッピーエンドは訪れない。この点は、40年間売春婦を続けていた女性が「この道に足を踏み込んだ者は、一生足を洗うことはできない」と、自分がコールガールを始めた年齢と同じ16歳の新人コールガールに語る場面が伏線として張られている。しかし、そもそもハッピーエンドになるかどうかはこの映画のテーマではないだろう。DVDのパッケージによれば、この作品は香港の売春婦たちが送る複雑なライフ(生活・人生)の描写であり、サブタイトルにこだわるかぎり、ライフは人生をなぞられつつ描かれた生活と読み取れる。

登場する売春婦たち事情をみると、(1)腎臓移植の手術を受ける主人をもつ主婦。高騰の医療費に対し売春という道を選ぶ。(2)再婚した母についていった娘が義理の父親に性的な行為を受けたことから家を飛び出し街の不良と恋に落ちる。その後、二人の楽しい生活を維持するためにと男が提案した売春に応じる長女(次女も長女の元へ逃げてくるが、コールガールになる前に長女が阿部定的行動で自分の男にケジメを付ける)。(3)高級コールガールとして実業家たちを客としてきた女優。仕事の合間を縫って売春をしてきたが恋人の出現とともに足を洗う。(4)不法滞在でコールガールをしてきたタイ人の女性。彼女も恋人と出会って売春から足を洗ったが、同僚のコールガールの自殺未遂に絡んで、病院で不法ビザを提示せざるをえず、あえなく強制送還される。

さて、DVDパッケージでは、香港の売春婦たちの複雑なライフと記されているが、この作品は人間関係がややこしいというわけではない。少なくとも、4人のストーリーとは理解できうる範囲であるし、むしろ彼女たちの日常生活は単純に描かれているといってもいい。では、何が複雑なのだろう。彼女たちは、売春か恋愛かで悩み決断を迫られる二者択一の問題や、随所に見られる男性優位の社会構造の問題、あるいは高騰する医療費問題など、現在の日本でも頻発している社会問題が、にわかには打開できないという複雑さを抱えているとみていい。それは時間を伴った問題であり、当然にも生活は時間を経て人生になるのだということを、改めて実感させられる。

最後に、編集で成功していると感じた点をメモしておく。この映画は、16歳の娘が警察の踏み込みと同時に隠れ口から脱出・逃亡するシーンで後半へと映るが、この時点で場面展開のスピードが極端にアップする。売春婦たちの日常生活が仕事中心に描かれてる前半では「セックスライフ」が、80年代の日活ロマンポルノを連想させるような、やや軽やかで時にはコミカルなものとして描かれている。しかし後半になると「明日なき女性」である4人の生活に転機が訪れ、生活というミクロなものが人生・生命という巨大なものへと拡大しながら、家庭という彼女たちの場所を振り返るような視点が出される。これは明らかに70年代の日活ロマンポルノを想像させるだろう。団地妻シリーズをはじめとする日活ロマンポルノは、70年代から80年代にかけて「生活・仕事・セックス・人生」を複合的に捉えてきたが、この作品はたった1本の映画でそのテーマをまとめ上げたといえば褒めすぎだろうか。

なお、この作品のマギー・チャンだが、結婚式の撮影をしているシーンや、恋人の家に婚約者として招待された場面では、あっさりしたドレスを着ていた。マギー・チャンのファンとしては、タンクトップや下着姿で登場されるよりもゴージャスに着飾った姿をもっとみたい。その意味で、この映画はマギー・チャンの良さを引き出すことに関して成功したといえない。

(2004年10月18日)

受賞

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DVD

コール・ガール|価格: ¥3,990(税込)|リージョン 2(日本国内向け)|NTSC|カラー|字幕スーパー|ビデオメーカー